みなさまごきげんよう
こんな疑問をもっている人のための記事です。
2014年に社労士試験に合格し、その後実務に精通している現役社労士が解説します。
社労士の良いところ
・多くのテーマから自分の興味を仕事にできる
・どんな性格の人にも活躍のチャンスがある
・身近な法律を扱うので社会的意義が大きい
社労士にできること 1・2・3号業務とは
社労士法には1号業務・2号業務・3号業務がそれぞれ明記されています。
1号業務と2号業務は「独占業務」とされており社労士しかできません。
メモ
1号業務(手続き代行)
2号業務(労働社会保険諸法令に基づく帳簿書類の作成)
3号業務(人事労務管理のコンサルティング)
1号業務(手続き代行)
第1号業務とは、手続き代行に関する仕事のことです。
企業が人を雇用すると、一般的に様々な届出が必要になります。
例えば
- 36協定(時間外勤務)の届出=労働基準監督署
- 健康保険や厚生年金の加入手続き=日本年金機構
- 雇用保険の加入手続き=ハローワーク
これらは専門家である社労士が行うことで、届出漏れやミスが防止することができます。
2号業務(労働社会保険諸法令に基づく帳簿書類の作成)
第2号業務とは、労働者に関わる帳簿をつける仕事です。
企業は人を雇用している限り、適切に管理すべき帳簿・書類があります。
例えば
- 労働者名簿
- 賃金台帳(給与に関すること)
- 就業規則(会社のルール)
知らないと法律違反やトラブルになる可能性のある分野です。社労士の正しい知識が求められる仕事になります。
3号業務(人事労務のコンサルティング)
第3号業務とは、相談業務という位置付けになります。
企業や組織は人の集合体。その“ヒト”を活性するための相談・支援をする仕事です。
例えば
- 賃金制度や人事制度など相談
- 教育や人材育成に関する相談
- パワハラなど問題が発生した時の相談や対応
3号業務は独占業務ではありませんが、社労士としての法律知識があるからこそ、自信をもって行うことができる仕事が多いです。
社労士にできる具体的な仕事内容について
ここからは更に深堀して具体的な仕事内容を紹介していきます。
社労士試験の科目同様、非常に多岐に渡るので、一つずつ解説します。
①給与計算
給与計算は、給与支給日に合わせて毎月必ず発生する仕事です。
まさに働く人の生活に直結した仕事と言えますね。
給与計算には、
- 雇用保険
- 社会保険
- 所得税や住民税
など控除保険料の算出のために社会保険の知識が必須です。
更には、
- 残業や休日出勤の割増賃金について
- 有給休暇や遅刻、早退、欠勤の処理
など労働基準法の知識も必要になってきます。
会社で働く人全てに関係する正確性と専門性が求められる大切な仕事です。
②労働保険・社会保険の手続き
会社で働く人には、一人ひとりに社会保険が関係してきます。
☑労災保険
☑雇用保険
☑健康保険
☑介護保険
☑厚生年金保険
従業員のため加入が義務付けられていますが、それには会社として一つずつ手続きが必要です。
会社は雇用する従業員の
- 入職があった時
- 退職があった時
- 病気や出産で休職する時
- 年に1度の社会保険料見直し
- 年に1度の労働保険料の納付
など様々なタイミングで正確な届出などの事務処理・手続きが発生します。
これらは、保険料算出の仕組みや保険給付の仕組みなど専門知識が必要な仕事になります。
③就業規則の作成と整備
労働基準法では常時10人以上の労働者を雇用する場合に就業規則の作成が義務付けられています。
就業規則はいわば会社のルールブック
✅基本となる会社の規則や規定を言語化する
✅法改正に併せて柔軟に見直しを行う
✅会社の思いを言語化する
これらを組み入れて、目的は働きやすい職場作りを実現することです。
ちなみに、世間で労使トラブル(会社と社員の揉めごと)は急激に増加しています。総合労働相談件数は14年連続で100万件を超える高止まり。
④ハラスメントや労使トラブルの対応
特に今の時代は、
- SNSなどで情報が溢れている
- 価値観の多様性が重視されている
- 転職時代に移行して、人の入れ替わりが多い
だからこそ、就業規則で最低限のルールを明確にすることの重要性も増しています。
労働基準法を中心に、正に社労士としての専門性が必須な分野になります。
⑤助成金の申請業務
助成金とは、国が定める返済の必要のない事業を助けてくれるお金です。
内容は様々で、
障害者系→一定の障害のある人を雇用する場合
教育系→主に社員向けに教育した場合
正社員化系→パート社員や派遣社員が正社員になった場合
雇用安定系→業績の悪い時なども既存の雇用を守るための援助
これは一例ですが、多岐に渡る助成金があります。
企業は色んな社会情勢や経済状況に対応していく必要があります。
その過程で “お金”が必要な事実は避けられません。
この“お金”を国が一部援助してくれるのが「助成金」です。
助成金の申請には“正しい会社”であることが必須になります。
なぜなら、当然ですが、不正や法律違反をしている会社に国はお金を出せないからです。
⑥障害年金の申請業務
障害年金とは簡単に言うと、
- 身体や精神の障害が原因で
- 仕事や日常生活に支障をきたす状態の場合に
- 国から年金として支給される
といういわゆる公的年金になります。
公的年金の制度は非常に複雑。
社労士試験においても「年金を制するものは受験を制す」と言われるぐらいです。
年金申請のフローは大まかには、次の通りです。
障害年金の簡易申請フロー
- 日本年金機構から必要な書類を入手する
- 医師に「診断書」や「受診状況証明書」の記入を依頼する
- 住民票などの添付書類を用意する
- 年金請求書を記入する
- 日本年金機構に申請書類を揃えて申請する
これらの手順を手伝ってあげるのが、障害年金の申請業務です。
障害のある人は労働面でハンデを背負うこともあるので、
❶働いたお給料での収入
❷公的保証の障害年金での収入
この2つで生計を維持しているケースも多いです。
正に専門知識を活かして個人に寄り添える、やりがいの大きい仕事の一つです。
⑦病気の治療と仕事の両立支援
近年は高齢化と医学の進歩に伴って、治療をしながら働く人が増えています。
特にがんは2人に1人が罹患する時代。
病気の治療と仕事を両立する上では、
- 有給休暇や会社独自の休職制度
- 休んだ時の保障として傷病手当金
- 入院費を安く抑える高額療養費制度
- 家族が病気になった時の介護休業
- 病気に伴う障害年金や年金の繰り上げ
などの社労士が専門とする法律制度が深く関係してきます。
社労士の立場としては、
- 社員など働く人に対して個別相談
- 会社の労務担当者として社内規定の整備
- 病院の相談員として患者さん向けに相談業務
- 身近な人が病気に罹患した時のアドバイス
など治療を続けていく上で切実なお金の悩みの相談にのることができます。
ちなみに筆者は行政のシンポジウムにコーディネーターとして登壇させて頂く機会がありました。
⑧人事制度策定で組織活性
社労士は人事労務の専門家との位置付けです。
そもそも企業の活動の根本は、主に3つ。
- 世の中の役に立つこと
- 結果として会社に利益をもたらすこと
- 社員を雇用して経済活動を回すこと
その為には企業で働く社員が、
- 前向きに働いてくれること
- 技術やスキルが向上・成長してくれること
- 会社に定着してくれること
これらが必要になります。
そのために会社としても人が育つ正しい仕組み作りが必須。
そこで、社労士の立場で具体的には、
等級制度・・会社内の役職や階級
評価制度・・何をどのように評価するか
賃金制度・・給与や賞与などを決める仕組み
これらを通じて成長できる環境を整える、そして会社が求めていることをメッセージとして明確にします。
そして、これらの制度を総称して“人事制度”と呼ばれます。
また、評価を給与や賞与などを通じて“お金”に連動させる場合は、専門知識が求められます。
社労士の3号業務とも言われ、会社毎に多種多様なニーズがあります。
社労士にできる仕事のメリット3選
ここからは社労士の仕事に携わって約10年。
筆者が実際に感じている社労士の良いところ・メリットを3つ挙げてみます。
社労士の仕事メリット3選
1、扱う業務の幅が広い
2、法改正が多く、その度にニーズが生まれる
3、人としての「個性」を活かすことができる
扱う業務の幅が広い
社労士の特徴の一つは、扱うテーマや仕事の幅が広いことです。これだけ多くの法律を扱うと、現役社労士でも全てを詳しく理解している人はいません。
社労士試験に合格後は、
好きなテーマを1つ~3つぐらいを深めていく。
そして専門分野を作っていくというイメージです。
具体的な仕事内容は紹介してきましたが、仕事を行う上では大きく2つの立ち位置が存在します。
1、企業に対して仕事・支援
2、個人に対して仕事・支援
企業に対して
- 法改正の多い社会保険に関する業務
- 各種労働法改正に対応した社内規定の反映
- 人材の有効活用や能力開発による社内活性化
個人に対して
- 年金の相談や手続きの代行
- 仕事と病気の治療の両立支援
- 育児や介護で休業する人への個別アドバイス
他にも、明確に区別できない仕事も含めて、社労士は選択肢が多いことが大きなメリットです。
法改正が多く、その度にニーズが生まれる
社労士が扱う労働法・社会保険に関することは日常生活や暮らしに深く関係しています。
- 高齢化や少子化などの人口構造の変化
- 物価上昇などの物やサービスの価格の変化
- 国の財政状況や企業の景気の変化
国はこれらに対応するために、
- 新たな法律や制度を作る
- 今の法律や制度を時代に合わせて変更する
ということを頻繁に行っています。
具体的に例をあげてみると、
- 少子化→子育世帯の社会保障を手厚くする
- 景気が悪い→助成金を新設・見直しする
- 高齢化と物価上昇→2つを考慮して年金額を改定
こんな感じで頻繁に法律や制度の改正の見直しがされています。
社労士としては、この状況は活躍のチャンスであり、腕の見せどころでもあります。
社労士試験で身に付けた基礎知識があるからこそ理解も早く、人に分かり易く説明することができますね。
人としての「個性」を活かすことができる
人としての「個性」を活かせることが社労士資格の大きなメリットだと思っています。
先ほど社労士業務のメリットとして、
1、扱うテーマや仕事の幅が広い
2、法律や制度の改正が多い
だからこそ活躍のチャンスが多いことはお示ししてきました。
更に「個性」を活かすことができる具体例としては、
- 大多数に向けてセミナー講師を行う
- 個別での説明や具体的な相談に応じる
- パンフレット作成や説明資料の作成を行う
同じ法律改正の説明を行う場合でも手段は人それぞれ。
自分に合った方法で専門性を発揮することができます。
普段の仕事選びについても、
ポイント
- 控えめで几帳面な性格→給与計算・社会保険の手続き
- 寄り添って仕事がしたい→年金の相談や助成金の申請代行
- 大きな仕事がしたい→セミナー講師や組織開発に携わる
このように自分の思考に合った形で専門性を発揮することができます。
自分の個性やキャラクター、そして好き・得意に合わせた“仕事の手段”をとれることは社労士の大きなメリットですね。
社労士にできること まとめ
いかがでしたか!?
社労士が扱う法律の前提は、日常生活や暮らし、働くことに密接に関わる法律が多い。
だからこそ、
- 社会情勢によって法律や制度の変更が多い
- 身近な法律やテーマが多いので、扱う範囲も広い
という特徴があります。
これらの法律や制度は丁度いい感じにややこしい特徴があります。だからこそ、社労士の出番が多くなりますね。
いろんな人の人生や社会と深く関わりながら仕事ができるのは、社労士の資格があるからこそ。自分の個性を大切にしつつ、社会的意義の大きい仕事に携われるのが社労士だと思っています。
それではまた(^^)